南米の小さな島国セントルシアは、かつては島の領有をめぐって、おもにイギリスとフランスの戦いが繰り広げられたが、独立国の現在は、いたって平和な国である。公用語は英語だが、一般に用いられているのはフレンチ・クレオール語など、英仏の文化が入り乱れ、さらには、一部の知識人エリートと、多くの一般庶民とのあいだには、意識のギャップがある。対立や暴動のひとつやふたつ起こっていてもふしぎはないのに、セントルシアがきわめて平和なのは、独特の祭りがあるからだとよくいわれる。セントルシアでは、八月三〇日に「聖ローズの日」、一〇月一七日に「聖マルゲリータの日」と、花にちなんだ名前の祭りが年二回ある。この祭りは、かつてイギリスとフランスが争っていた名残。バラの祭りの「聖ローズの日」はイギリス、マーガレットの祭りの「聖マルゲリータの日」はフランスを代表している。祭りの当日、「王」「王妃」「王子」「王女」から、「総督」や「首相」、「近衛兵」「軍医」「看護婦」など、宮廷生活や政治に関わる人々に扮した仮装団が、音楽隊や歌手とともに、首都じゅうを行進する。行進に参加するのは、おもに国のエリート階級だが、庶民たちもこぞって祭りに酔いしれる。さらに、祭りでは、歌手たちが歌合戦を行う。お偉方の演説などは英語だが、歌合戦で競いあう歌は、ふだん用いられているフレンチ・クレオール語だ。この歌合戦は、たんに歌唱力を競いあうだけではない。文字通り、歌で戦う歌合戦である。歌手たちは、敵味方に分かれ、歌で「敵」を嘲笑し、ののしる。歌手の歌の合間には、聴衆も合いの手に加わる。歌唱力だけでなく、いかに聴衆をうまく引きこめるか、どれだけの合いの手が加わるか、どれだけ巧妙に、「敵」を嘲笑したり、ののしったり、批判できるかというのが、重要なポイントとなる。この歌合戦で、政治や経済や社会への風刺もいっきょに爆発。歌合戦にことよせて、日ごろのうっぷんが歌にされ、ストレスが解消される。それで、セントルシアはあんなに平和なのではないかといわれているのだ。
日本では、これまで格安航空券をとかく異端視してきた。だが実際の売り方を見ていると、むしろ航空会社側がやむなく売っているという面も目立つ。だから、格安航空券は毎日航空機が日本から飛んでいる限り、絶対になくならない。そして大事なことは、格安航空券というと違法な航空券のように思われるが、航空会社や旅行代理店が発行した正式な「航空券」だということだ。もちろん様々な制約もあるが、与えられた条件下で利用する分には何の問題もない。ただひとつ注意したいのは「安い」というのは、何らかの理由があるから安いのだ。だから、「格安」や「激安」と呼ばれる航空券を買う前に、それがどうして安いのか、理由をしっかり頭に入れておきたい。格安航空券で最も心配なのは、行きではなく帰りの便のオーバーブッキングだ。オーバーブッキングは、航空会社がある程度のキャンセルを見込んで、少し多目に予約を受けるため、その予想を上回って客がチェックインすると乗れなくなることである。日本から出る分には問題ないが、世界中から観光客の集まる国際観光地などでは、各国の便の遅れや欠航などで乗客が膨れ上がるためにオーバーブッキングが起こる。その時、正規航空券を持っている乗客は他の航空会社でも利用できるため、その航空会社、あるいはその便しか利用できないという制限付きの客が被害を被るわけだ。だから条件の悪い格安航空券を利用する場合は、帰国時にできるだけ早く空港に行ってチェックインを済ませ、ボーディングパスを得ておくに限る。
焼酎もいまや全国区になったが、もとは沖縄の泡盛が鹿児島に入って、それが全国に普及したものである。ただし、泡盛は米から作るが、薩摩の焼酎はイモから作る。飲み方としても、泡盛がストレートとかオンザロックに、麦焼酎が水割りに向くのに対して芋焼酎はお湯割りがよい。肴はやはり薩摩揚げ。作りたてのものはさすがにうまい。鹿児島県は薩摩国と大隅国からなる。もとは日向に属していたが、奈良時代に分離された。大和朝廷の感覚からいうと、薩摩・大隅は肥後の向こうにあるのでなく、日向のさらに奥にあるという感覚だったことが分かり、統一国家成立史を考えるうえでも参考になる。鹿児島は室町時代の初期から島津氏の本拠が置かれたが、現在の城が築かれたのは関ヶ原の戦いのあとのことである。島津氏は、甲斐の武田信玄と同じく農村に散らばって住んでいる侍たちの団結こそ最良の防御と考え、あえて本格的な城を築かず、この鹿児島城も城山の麓に簡単な堀をめぐらせただけのものである。